ルール
布石将棋は、
一局の流れ
布石将棋
- 空の盤から始めます。20枚(歩9・香2・桂2・銀2・金2・角1・飛1・玉1)を、先手から交互に1枚ずつ、自陣の四段目以内に打ちます。
- お互いが20枚を打ち終える40手目までは、盤上の駒を動かすことはできず、駒を打つことだけができます。
- 二歩を防ぐため、同じ筋の4マスすべてを歩以外の自分の駒で埋める手は反則(禁じ手)です。
- 41手目からは本将棋です。先手から指し、相手の玉を詰ませば勝ちです。
打つ20枚
本将棋の初期配置と同じ20枚を、そのまま自分で置きます。玉も打つ駒のひとつで、いつ置いてもかまいません。
×9 ×2 ×2 ×2 ×2 ×1 ×1 ×1 - 20枚/人
置ける範囲
二歩を避ける禁じ手
歩は9枚あり、二歩は本将棋と同じく反則なので、9つの筋に1枚ずつ置くことになります。ある筋を歩以外の駒で埋めてしまうと、その筋には歩を置けなくなり、どこかの筋で必ず二歩が起きてしまいます。この規定は、それを手前で防ぐためのものです。
✕4マス目を歩以外で埋める手
○歩は9筋に1枚ずつ
図は先手陣の四段だけを描いています。後手も同じです。
40手目の制限と41手目の裁定
布石の最中(1〜40手目)は、王手や詰みの概念を適用しません。駒を動かせないので、王手をかけても相手はそれを無視して打ち続けられるからです。その代わり、40手を打ち終えた時点で片方の玉が相手の駒の利きに入っていることが起こりえます。このサイトでは、次の特則で扱います。
40手目の制限
41手目の裁定
| 40手を打ち終えた時点 | 扱い |
|---|---|
| 後手玉が先手の利きに当たっている | ふつうは40手目の制限があるため起こりません。39手目の時点ですでに王手がかかっていて一枚では防げないときだけ生じ、41手目に先手の勝ちとなります(41手目の裁定)。 |
| 先手玉が後手の利きに当たっている | ふつうの王手として扱います。先手の最後の一枚(39手目)に制限は無く、先手は41手目でこの王手に対応します。 |
天秤将棋
布石将棋では先手の勝率が6割を超え、AIの実力が高くなるほど先手有利の差が顕著になります。しかし、この有利さを固定のルールや点数で補正しようとすると、対局者の実力によって過不足が生じてしまいます。そこで天秤将棋では数値で補正するのをやめ、先手の利と玉の堅さの差を、対局者自身に釣り合わせてもらう形をとります。
仕組みはケーキの分け方と同じです。一人が二つに切り、もう一人が先に取る「パイ・ルール」の原理を採用しました。ここでは切る代わりに一方が両方の玉を置き、取る代わりにもう一方が先手か後手かを選びます。置く人は自分がどちらを持つか分からない状態で置くため、どちらかに寄せる理由がありません。
手順
振り駒で両玉を置く人を決め、もう一方が先後を選ぶ役になります。
-
置く人
1手目 先手玉を置く
先手陣の四段以内 -
置く人
2手目 後手玉を置く
後手陣の四段以内 -
選ぶ人
☗ 先手を持つ☖ 後手を持つ先後を選ぶ
局面は変わらない -
先手・後手
3〜40手目 残りを打つ
先手から交互に19枚ずつ
置ける範囲、二歩回避の禁じ手、40手目の制限、41手目の裁定は布石将棋と同じです。違うのは冒頭の2手と先後の選択、そして次に説明する禁じ手「二飛香」です。玉はすでに盤上にあるので、3手目以降に打つのは19枚ずつになります。
二飛香(にひきょう)
布石のあいだ(3〜40手目)、飛と香は、自陣の同じ筋に合わせて1枚までしか打てません。すでに自分の飛か香がある筋に、飛や香を打つ手は反則(禁じ手)となります。数えるのは自分の駒だけで、相手の飛や香は数えません。41手目からの本将棋には適用しません。
✕飛のある筋に香を打つ手
○飛と香は別々の筋に
40手目の制限とは同時に適用されます。自玉に当たる利きを遮る手が二飛香のために打てないときは、その手は無いものとして扱います。遮る手が1つも残らなければ、これまでと同じく41手目の裁定になり、そのときも二飛香は解除されません。どの局面でも、打てる手が必ず1つは残るようになっています。
このルールは2026年9月13日に加えました。布石を打つAIが、飛と香2枚を同じ筋に縦に重ねる形(「3連ロケット」)ばかりを組むようになっていたためです。この形は相手が組んでも組まなくても組んだ側が勝ち越すので、学習を進めても廃れませんでした。強さの芯は香2枚にありますが、香だけを禁じると飛と香1枚の形に移るだけなので、飛も合わせて数えることにしました。駒の当たりのように、受けを用意すれば対処できる形は対象にしていません。禁じているのは、同じ筋に縦に走る駒を重ねる形だけです。
置く人と先後
誰が両玉を置くかは振り駒で決まり、先手・後手は選択で決まります。置いた人が先手になるとは限りません。棋譜には両方を残します。
なぜ釣り合うのか
天秤の一方に先手の利が載り、もう一方に玉の堅さの差が載ります。
両玉を同じ堅さに置けば、先手の利がそのまま残ります。すると選ぶ人は先手を取り、置く人が損をします。逆に先手玉を薄くしすぎれば、今度は選ぶ人が後手を取ります。置く人が損をしないのは、堅さの差が先手の利とちょうど釣り合うときだけです。
したがって、どこで釣り合うのかを決めるのはルールの文面ではなく、置く人自身のその日の判断です。強い相手なら釣り合う点も変わりますが、規定を書き直す必要はありません。測定も数値による補正も要りません。ここに至るまでの経緯は天秤将棋ができるまでに書きました。
AIが担う判断
このサイトのAIは、置くときも選ぶときも探索をしません。あらかじめ作った表を1回引くだけです。その表は「先手玉を◯、後手玉を◯に置いて最後まで指したときの先手勝率」を、36×36=1,296通りの組すべてについて並べたものです。
- 置くとき:勝率が五分にいちばん近い48組の中から、1組を無作為に選びます。毎局同じ置き方にならないよう、絞りすぎないようにしています。
- 選ぶとき:置かれた組の値が50%を超えていれば先手を、下回っていれば後手を持ちます。
- 3手目以降:布石を打つAI(ポリシーネットワーク)が、配置完了まで残りを打ちます。このAIは二飛香を加える前のルールで学習したもので、反則になる手を除いた残りから選んでいます。
この48組だけは、採点ではなく実際の対局の勝敗で値を決めています(1組あたり600局以上)。表そのものは下のとおりです。表の値はどれも二飛香を加える前のルールで測ったもので、測り直してはいません。
king_pairs_iter2455_games.json をそのまま描いています。自陣の四段目(相手に最も近い段)に玉を置くと大きく損をし、隅の最下段がいちばん良い位置です。最良の組と最悪の組の差は先手の利の何倍もあるため、玉の置き場所だけで釣り合わせても、まだ余裕があります。表がどう作られ、どこで間違えたかはコラムに書きました。
三つのルールの違い
| 本将棋 | 布石将棋 | 天秤将棋 | |
|---|---|---|---|
| 初期配置 | 決まっている(1通り) | 自分たちで打つ(約1037通り) | |
| 最初の40手 | 指す | 打つのみで、駒は動かせない | |
| 布石の禁じ手 | — | 二歩回避 | 二歩回避・二飛香 |
| 玉の位置 | 5九・5一 | 自陣四段のどこでも | 置く人が両方を決める |
| 先後の決め方 | 振り駒 | 振り駒 | 置かれた両玉を見て選ぶ |
| 41手目から | — | 本将棋 | |
| 先手の得 | 残る | 残る(AI同士で6割強) | 置く人が毎局その場で釣り合わせる |
棋譜の書き方
手順は、USI形式の駒打ちを空白で区切って並べます。
P駒歩
*打つ7筋右から7
f段上から6
P*7f は「7六に歩を打つ」です。天秤将棋の棋譜では、2手目の直後に手番選択を示す識別子として choose:sente または choose:gote が記録されます。メニューの「棋譜」から貼り付けて再現できます。
布石の途中の SFEN は、持ち駒に玉が入る布石将棋の拡張で、ふつうの将棋ソフトでは読めません。41手目以降は標準の SFEN です。