ルール

布石将棋は、何も置かれていない盤に対局者が交互に駒を配置してから戦う将棋です。初期配置を自分たちで作るところ以外は、40手を打ち終えたあとは本将棋と同じルールで指します。天秤将棋は、布石将棋の先手有利を解消するために、公平な手番選択の手順(パイ・ルール)を組み込んだ発展形です。

空盤には何も置かれていない
20枚玉を含めて各自20枚
40手打ち終わるまで駒は動かせない
41手目ここから本将棋

一局の流れ

1手目 41手目 布石将棋 20枚ずつ、交互に打つ 本将棋 天秤将棋 残り19枚ずつ、交互に打つ 本将棋 足したのは、両玉を置く2手と、先後を選ぶ1回だけ
横軸は手数です。天秤将棋が布石将棋に加えたのは冒頭のごく一部で、41手目から本将棋になる点は変わりません。

布石将棋

  1. 空の盤から始めます。20枚(歩9・香2・桂2・銀2・金2・角1・飛1・玉1)を、先手から交互に1枚ずつ、自陣の四段目以内に打ちます。
  2. お互いが20枚を打ち終える40手目までは、盤上の駒を動かすことはできず、駒を打つことだけができます。
  3. 二歩を防ぐため、同じ筋の4マスすべてを歩以外の自分の駒で埋める手は反則(禁じ手)です。
  4. 41手目からは本将棋です。先手から指し、相手の玉を詰ませば勝ちです。

打つ20枚

本将棋の初期配置と同じ20枚を、そのまま自分で置きます。玉も打つ駒のひとつで、いつ置いてもかまいません。

置ける範囲

後手が打てる範囲(後手陣の四段)
先手が打てる範囲(先手陣の四段)
打てるのは自陣の四段目以内だけです。中央の五段目には、どちらも打てません。

二歩を避ける禁じ手

歩は9枚あり、二歩は本将棋と同じく反則なので、9つの筋に1枚ずつ置くことになります。ある筋を歩以外の駒で埋めてしまうと、その筋には歩を置けなくなり、どこかの筋で必ず二歩が起きてしまいます。この規定は、それを手前で防ぐためのものです。

✕4マス目を歩以外で埋める手

✕
7筋はすでに3マスが歩以外で埋まっています。残る1マスを歩以外で埋める手は、駒の種類にかかわらず反則です。

○歩は9筋に1枚ずつ

段はばらばらでかまいません。同じ筋に2枚が来なければよいのです。

図は先手陣の四段だけを描いています。後手も同じです。

40手目の制限と41手目の裁定

布石の最中(1〜40手目)は、王手や詰みの概念を適用しません。駒を動かせないので、王手をかけても相手はそれを無視して打ち続けられるからです。その代わり、40手を打ち終えた時点で片方の玉が相手の駒の利きに入っていることが起こりえます。このサイトでは、次の特則で扱います。

40手目の制限

○
✕
先手の飛車が後手玉に当たっています。後手の最後の一枚(40手目)は、この利きを遮る手(○)でなければなりません。関係のないところへ打つ手(✕)は反則手となります。

41手目の裁定

飛車と角の二枚から当たっていて、どこに1枚打っても両方は遮れません。このときに限り40手目の制限を解除し、41手目に先手が玉を取って勝ちとします。
40手を打ち終えた時点扱い
後手玉が先手の利きに当たっているふつうは40手目の制限があるため起こりません。39手目の時点ですでに王手がかかっていて一枚では防げないときだけ生じ、41手目に先手の勝ちとなります(41手目の裁定)。
先手玉が後手の利きに当たっているふつうの王手として扱います。先手の最後の一枚(39手目)に制限は無く、先手は41手目でこの王手に対応します。

天秤将棋

布石将棋では先手の勝率が6割を超え、AIの実力が高くなるほど先手有利の差が顕著になります。しかし、この有利さを固定のルールや点数で補正しようとすると、対局者の実力によって過不足が生じてしまいます。そこで天秤将棋では数値で補正するのをやめ、先手の利と玉の堅さの差を、対局者自身に釣り合わせてもらう形をとります。

仕組みはケーキの分け方と同じです。一人が二つに切り、もう一人が先に取る「パイ・ルール」の原理を採用しました。ここでは切る代わりに一方が両方の玉を置き、取る代わりにもう一方が先手か後手かを選びます。置く人は自分がどちらを持つか分からない状態で置くため、どちらかに寄せる理由がありません。

手順

振り駒で両玉を置く人を決め、もう一方が先後を選ぶ役になります。

  1. 置く人
    1手目 先手玉を置く
    先手陣の四段以内
  2. 置く人
    2手目 後手玉を置く
    後手陣の四段以内
  3. 選ぶ人
    ☗ 先手を持つ☖ 後手を持つ
    先後を選ぶ
    局面は変わらない
  4. 先手・後手
    3〜40手目 残りを打つ
    先手から交互に19枚ずつ

置ける範囲、二歩回避の禁じ手、40手目の制限、41手目の裁定は布石将棋と同じです。違うのは冒頭の2手と先後の選択、そして次に説明する禁じ手「二飛香」です。玉はすでに盤上にあるので、3手目以降に打つのは19枚ずつになります。

二飛香(にひきょう)

布石のあいだ(3〜40手目)、飛と香は、自陣の同じ筋に合わせて1枚までしか打てません。すでに自分の飛か香がある筋に、飛や香を打つ手は反則(禁じ手)となります。数えるのは自分の駒だけで、相手の飛や香は数えません。41手目からの本将棋には適用しません。

✕飛のある筋に香を打つ手

✕
✕
5筋にはすでに飛があるので、香を打つ手は反則です。9筋のように香のある筋へ2枚目の香や飛を打つ手も、同じく反則となります。

○飛と香は別々の筋に

飛と2枚の香がそれぞれ別の筋にあれば、段はどこでもかまいません。

40手目の制限とは同時に適用されます。自玉に当たる利きを遮る手が二飛香のために打てないときは、その手は無いものとして扱います。遮る手が1つも残らなければ、これまでと同じく41手目の裁定になり、そのときも二飛香は解除されません。どの局面でも、打てる手が必ず1つは残るようになっています。

このルールは2026年9月13日に加えました。布石を打つAIが、飛と香2枚を同じ筋に縦に重ねる形(「3連ロケット」)ばかりを組むようになっていたためです。この形は相手が組んでも組まなくても組んだ側が勝ち越すので、学習を進めても廃れませんでした。強さの芯は香2枚にありますが、香だけを禁じると飛と香1枚の形に移るだけなので、飛も合わせて数えることにしました。駒の当たりのように、受けを用意すれば対処できる形は対象にしていません。禁じているのは、同じ筋に縦に走る駒を重ねる形だけです。

置く人と先後

誰が両玉を置くかは振り駒で決まり、先手・後手は選択で決まります。置いた人が先手になるとは限りません。棋譜には両方を残します。

なぜ釣り合うのか

天秤の一方に先手の利が載り、もう一方に玉の堅さの差が載ります。

先手 ☗ 先に動ける得+ 薄い玉 後手 ☖ 堅い玉
置く人は、この二つが釣り合うところを探します。対局画面でも、置く番と選ぶ番のあいだは同じ図が出ます。

両玉を同じ堅さに置けば、先手の利がそのまま残ります。すると選ぶ人は先手を取り、置く人が損をします。逆に先手玉を薄くしすぎれば、今度は選ぶ人が後手を取ります。置く人が損をしないのは、堅さの差が先手の利とちょうど釣り合うときだけです。

したがって、どこで釣り合うのかを決めるのはルールの文面ではなく、置く人自身のその日の判断です。強い相手なら釣り合う点も変わりますが、規定を書き直す必要はありません。測定も数値による補正も要りません。ここに至るまでの経緯は天秤将棋ができるまでに書きました。

AIが担う判断

このサイトのAIは、置くときも選ぶときも探索をしません。あらかじめ作った表を1回引くだけです。その表は「先手玉を◯、後手玉を◯に置いて最後まで指したときの先手勝率」を、36×36=1,296通りの組すべてについて並べたものです。

この48組だけは、採点ではなく実際の対局の勝敗で値を決めています(1組あたり600局以上)。表そのものは下のとおりです。表の値はどれも二飛香を加える前のルールで測ったもので、測り直してはいません。

玉のマスひとつの価値(勝率ポイント、先手から見た値)です。左が先手玉、右が後手玉で、正なら先手に有利、負なら後手に有利です。公開している表 king_pairs_iter2455_games.json をそのまま描いています。

自陣の四段目(相手に最も近い段)に玉を置くと大きく損をし、隅の最下段がいちばん良い位置です。最良の組と最悪の組の差は先手の利の何倍もあるため、玉の置き場所だけで釣り合わせても、まだ余裕があります。表がどう作られ、どこで間違えたかはコラムに書きました。

三つのルールの違い

本将棋布石将棋天秤将棋
初期配置決まっている(1通り)自分たちで打つ(約1037通り)
最初の40手指す打つのみで、駒は動かせない
布石の禁じ手—二歩回避二歩回避・二飛香
玉の位置5九・5一自陣四段のどこでも置く人が両方を決める
先後の決め方振り駒振り駒置かれた両玉を見て選ぶ
41手目から—本将棋
先手の得残る残る(AI同士で6割強)置く人が毎局その場で釣り合わせる

棋譜の書き方

手順は、USI形式の駒打ちを空白で区切って並べます。

P駒
歩
*打つ
7筋
右から7
f段
上から6

P*7f は「7六に歩を打つ」です。天秤将棋の棋譜では、2手目の直後に手番選択を示す識別子として choose:sente または choose:gote が記録されます。メニューの「棋譜」から貼り付けて再現できます。

布石の途中の SFEN は、持ち駒に玉が入る布石将棋の拡張で、ふつうの将棋ソフトでは読めません。41手目以降は標準の SFEN です。

出典